ASML
ASML(日: エーエスエムエル、蘭: ASML Holding N.V.)は、オランダ北ブラバント州フェルトホーフェンに本部を置く半導体製造装置メーカーである。半導体露光装置(ステッパー、フォトリソグラフィ装置)を販売する世界最大の会社で、16カ国に60以上の拠点を有し、世界中の主な半導体メーカーの80%以上がASMLの顧客である。日本法人はエーエスエムエル・ジャパン株式会社。ユーロネクスト・アムステルダム、NASDAQ上場企業(Euronext: ASML 、NASDAQ: ASML)。
概要
IDMやファウンドリなどの半導体メーカーは、ムーアの法則に従い、製造するIC(集積回路)を年々微細化する。ICの製造工程では、30から40回シリコンウェハーに露光するため、露光機の性能がICの性能を左右すると言っても過言ではない。その為、ASMLは継続的に研究開発を行っている[2]。ASMLは液浸の採用によって2003年以降、躍進した[3]。一方で、現代の液浸露光技術に関する基本特許はニコンが保有していて両社の間には最近の2019年まで様々な法的紛争が起きていた。2006年に出荷された「XT:1700i」は45nm世代の量産に向けたArF液浸スキャナーで、光学系の開口数(N.A.)が1.20と、初めてこれまでの限界とされてきた1.00を超えた[3]。近年の露光機には、光源に紫外線を発するArFエキシマレーザーが使用されており、さらに液浸露光技術が用いられる。2019年には液浸露光装置の解像度が13ナノメートルに達した[4]。
また、ASMLは2020年(令和2年)現在、世界唯一の極端紫外線リソグラフィ(EUVL)装置メーカーである。同装置は7nmノード以下の露光が可能である。同装置の価格は1台当240億円に達する[5]。
光学系は前からカール・ツァイスが供給し、蛍石や石英がレンズに使用されて光学系は前からカール・ツァイスが供給し、蛍石や石英がレンズに使用されている。近年では反射鏡を組み合わせた光学系もある。技術をアウトソーシングする戦略は、国内外からオープンイノベーションの成功例とも評価された。

ただし、躍進を始めてからは違う局面になっている。ツァイスの半導体事業は、2000年代初頭に子会社であるSMT社に分社化されていて、近年ASMLが資本参加している[6]。前からの光源サプライヤーであるアメリカのサイマー(英語版)は2012年に買収している[7]。2020年には他の光学メーカーを買収し、光学技術まで内製化している[8]。

ASMLは本来オランダの政策金融で破綻を免れた後、日本勢の独走に危機感を感じていたアメリカ官民の理解を得て、技術導入と買収によって成長した企業という背景をもつ。

世界シェア・ランキング
売上高ベースで2019年のASML露光装置の世界シェアは81.2%である[9]。1996年は日本のニコンが約50%弱、キヤノンが約25%のシェアを獲得していた。ASMLは同ベースで2002年に初めて1位となり、2005年以降ニコンを完全に抜いた。

露光装置の内訳を見ると、EUVで世界シェア100%、ArF液浸で97%、KrFで65%(2018年、売上高ベース[10])と高分解能の露光装置では圧倒的なシェアを獲得している、装置の価格はEUV装置で一台200億程度、比較的安い装置でも数十億は下らない非常に高価な設備である。

2008年の半導体製造装置メーカーランキング(VLSI Researchによる)では、東京エレクトロンを抜き2位に浮上し[11]、2011年の同ランキングではアプライド・マテリアルズを抜き、初めて1位となった[12]。

大学との産学連携によって始めたIMECは、今はリソグラフィだけではなく、先端工程開発全般をリードしている。

沿革
1984年 フィリップス社とASMインターナショナル社がそれぞれ50%ずつ出資する合弁会社ASM Lithographyとして設立[4]
1988年 スピンオフし独立した企業となり、旧社名の省略形のASMLを社名とする
1995年 アムステルダム証券取引所およびナスダックに上場[4]
2000年 アメリカの同業SVGを買収した事によって、それまでにアジア新興勢を取引先としていたASMLが最大の半導体メーカー米インテルへのアクセスを確保、一気にシェアを拡大
2001年 エーエスエムエル・ジャパン株式会社を設立。同年12月ニコンが特許侵害でASMLを提訴(2004年に和解)[13]
2004年8月にArF液浸露光装置の第1世代機(試作機)「AT:1150i」出荷
2004年 第2世代機(先行量産機)「XT:1250i」出荷
2004年 第3世代機(量産機)「XT:1400i」出荷
2006年 第4世代機(量産機)「XT:1700i」出荷
2012年 次世代露光技術の一つである極端紫外線の開発の加速化のため、世界半導体大手の3社インテル、サムスン、TSMCから約50億ドルの投資を受け入れる。ニコンと長いパートナー関係のインテルが6割の30億ドルを担う事になる[14]。ニコンは同技術の普及が起こる可能性が低いと判断し、2010年代初頭に開発から撤退した
同年 アメリカのサイマーを買収[7]
2016年 台湾の漢民微速科技を買収[15]
2017年 ニコンがASMLを再び特許侵害で提訴[16]
2018年 極端紫外線初の量産機「NXE:3400B」の本格的な出荷と使用の開始
2019年 ニコンとの和解成立[17]
2020年 ドイツのベルライナー・グラス・グループを買収[8]

ASMLとTSMCとの関係
                    
オランダにASMLという会社がある。時価総額2642.2億ドル。これは、オランダの企業中でトップだ。オランダのトップ企業はフィリップスだと思っていた人にとっては驚きだ。「そんな会社、聞いたこともない」という人が多いだろう。